ロングインタビュー:光岡先生、ヨーグルトってどこまで体にいいんでしょうか?(1)

目には見えない微生物たちの働きがヒトの健康に大きな影響を与えている……その象徴が、腸内に棲んでいる無数の細菌たち(腸内細菌)。日本はこうした腸内細菌の働きを助ける発酵食品の宝庫であり、この列島に暮らす人たちは世界的にも「腸にやさしい食べ方・生き方」をしてきたことで知られますが、「なぜ腸内細菌が重要なのか?」「腸の健康を保つことがなぜ心身の健康につながるのか?」……肝心な点が意外と理解されていないのではないでしょうか? そこで、腸内細菌学の生みの親であり、当サイトのロングインタビュー(→こちらを参照)場していただいたこの分野の第一人者、光岡知足先生に再びご登場いただき、お話を伺いました。テーマは、発酵食品としておなじみのヨーグルトです。日本の、そして世界の腸内細菌学は、ヨーグルトの研究を通じて確立されていったものなのです。(長沼敬憲)


第1回・ヨーグルトの菌=腸内のビフィズス菌とは限らない!?

――先生、今日はヨーグルトの話を中心に伺っていきたいと思っているんですが、世の中には「●●●を食べれば健康になれる」っていう話がとても多いですよね? ヨーグルトに関しても、同じような質問を受けることが多いんです。「ヨーグルトって、本当に体にいいんでしょうか」って。

光岡 一つの食品を摂っただけで健康になれるということはありませんよ。

――では、ヨーグルトを食べると腸内環境が改善されると言われていますね? こちらについてはどう考えればいいでしょうか?

光岡 腸内環境が改善されるということは、腸内の善玉菌の働きが優勢になるということです。善玉菌というのは私が便宜的に名づけたもので、ヒトの腸では(広義の)乳酸菌の一種、ビフィズス菌が該当すると考えてください。

要するに、ヨーグルトを食べるとこの善玉菌=ビフィズス菌が増えるのかということだと思いますが、単純に「はい、そうです」とは言えないですね。